いつものように授業を終えて教室を出ると、事務室にうら若き女性の姿がありました。
遠目には分からなくとも、数歩近づけばくっきりと、かつての面影を残すその女性は、果たして五年前(まだ前職の教室にいた頃ですね)に、某私立中に進学した教え子のKさんでした。
Kさんの学年の子たちのことはとてもよく覚えています。
小学4年から3年間(Kさんは5年生の秋だったかな)、週2回以上授業を担当し、授業のない日でも何かと事務室にやってきて、毎日のように顔を合わせてきた子たちです。
みんなまっすぐないい子たちばかり、やるときはやる、笑うときは大笑いする、クラスの仲も良く、とても印象に残っていますね。結婚するんだと報告したら泣かれ(笑)、合宿で一位を取れなかったと泣かれ、最後は最後で合格に泣かれ、卒業してからも久々に顔を合わせるとまた泣かれ(笑)、涙涙に彩られた教え子たちです。
今もってたまに近況を知らせてくれる子もいるのですが、今回Kさんは推薦で医学部に合格したとのこと。
もとより才女の片鱗を感じさせたKさん、その後も頑張って才能を開花させていたんですね。
小学生時代、疑問や質問に答えると先生はすごいね、と無邪気に言ってくれる彼女たちに、僕はいつも「君たちは将来僕なんか軽々と超えて、もっと立派な大人になってね」と言い続けてきましたが、彼女は立派にその約束を果たしてくれようとしているわけです。
これがまた嬉しくて…僕のようなものでも曲がりなりに「先生」らしく、職責を少しは果たせたかな、とささやかに感じ入ります。
そのあとは懐かしい写真なども見ながら思い出話に花が咲き、1時間以上も話し込んでしまいました。
懐かしい話も沢山しましたが、そのほかに彼女の話してくれた「医学部の面接」現場の具体的なやりとりは特に興味深いものがありました。
大学側が学力的な裏付けはもとより、医師の道を志す人間に求めているものは何なのか、伝わってくるようだったのです。
おそらくそれは、生命と向き合う倫理観、患者の気持ちに寄り添える人間性、そして根拠と客観性を伴う科学的な(スピリチュアルでない)思考であるでしょう。
僕も年齢を重ねたいまだからこそ、こんな読み取り方もできますが、顧みて18の時の自分にそんなことができたでしょうか。
彼女は事前に丸暗記したような答えではダメだと見抜き、その場で一つ一つ考えて答えたそうです。
さらにはそんな彼女から見て、この人は合格するだろうなという人ばかりが受かっていたと。
この面接の本質をとらえたればこその的確な洞察力に、大きな成長も感じられてこちらもまた嬉しくなりました。
他の同期の子たちの結果を待って、春にお祝い会をしようと約束し、見送りました。
これから本番を迎える子たち、かわいらしい小学生だったあの子たちがはや大学受験とは。
今年はMiraizの一期生たちも大学受験ですね。
悔いを残さぬよう頑張ってほしいものです。もちろん今年の中3受験生たちも。
いやしかし、5年も前の教え子がこうして報告に来てくれるなんて。実に味わい深い時間でした。
この仕事のご褒美は、こうしてかなりの時間差で届けられたりもして、それがまた実に、イイんですよねえ。